311被災地視察研修、通算10回目を実施しました/23都道府県34名と福井新聞同行デスク1名が参加、東日本大震災の学校被災現場の知見と教訓を共有しました
宮城教育大学は2025(令和7)年2月21-24日、全国の津波災害等警戒地域の教職員を対象に、東日本大震災の知見を学ぶ「311被災地視察研修」を実施しました。
2019年4月に発足した「防災教育研修機構」(通称・311いのちを守る教育研修機構)の取り組みで、通算10回目になります。
全国から120件を超す応募・問い合わせがあり、地域バランス等を勘案して小中高校・特別支援校の校長、教頭、教諭ら23都道県34人の参加を決めました。今回は能登半島地震を受けて日本海側からの応募が目立ち、6人が参加しました。
寒波が長引き、連日、最高気温3度前後という厳しい条件でしたが、おおむね晴天に恵まれ、予定通り3泊4日の日程で被災地を巡りました。
視察先、研修内容はこれまでと同じです。宮城県気仙沼市、岩手県釜石市鵜住居地区、宮城県南三陸町戸倉地区、石巻市大川小震災遺構、門脇小震災遺構など被災した学校跡などを巡り、当時の校長や遺族らから話を聴きました。
ワークショップなどで防災教育に取り組む姿勢、学校現場の災害対応の教訓、「ともに生き抜く力」を育む教育の要点を共有しました。終了後のアンケートでは、回答があった33人中32人が「期待以上だった」、1人が「期待通りだった」と答え、成果を所属先や地域に伝える役割を誓いました。
同内容・同行程の研修は新年度以降、企画運営担当の武田真一が代表理事を務める公益社団法人3.11メモリアルネットワークが引き継ぎ、8月、2月と定期実施してまいります。
【概要報告】
- 日程
・2025(令和7年)2月21日(金)-24日(月・祝) 3泊4日
・詳細日程は、別紙1の通り
・参加費等の案内文書は、別紙2の通り
- 参加者概要
長崎県1人、福岡県1人、山口県1人、岡山県1人、島根県1人、愛媛県2人、高知県2人、徳島県1人、兵庫県3人、和歌山県2人、福井県1、石川県1人、富山県1人、愛知県1人、岐阜県1人、静岡県3人、神奈川県1人、東京都2人、埼玉県1人、千葉県1人、山形県1人、福島県1人、北海道4人の計34人
・男性17人、女性17人
・小中高校や特別支援学校の校長、教頭、教諭、養護教諭、事務職員
・ほかに福井新聞の同行デスク1人
- 主な視察地と寄せられた感想(視察順、抜粋加筆整理)
【気仙沼市】波路上・杉ノ下地区の慰霊碑、気仙沼向洋高校震災遺構・伝承館
・指定避難先に逃げ込んだ住民ら93人が犠牲になった現場を遺族の案内で視察
・校舎4階まで津波に襲われた旧高校校舎の遺構を元教員ら語り部の案内で視察
「事前に杉ノ下で多くの人が亡くなったことは聞いていたが、現地に立ってみて、すぐ目の前の気仙沼向洋高校との違いがより鮮明に感じた。避難訓練にとても熱心だったのに過去の経験に囚われて動かなかった地域住民。そのすぐ先で、一斉に逃げる高校生。情報も備え方もアップデートしていかなければならない」
「津波の威力がものすごいということがよくわかった。高校生防災サミットで気仙沼向洋高校の生徒さんに語り部の活動を発表いただいたので、その内容とリンクして遺構をみることができました。校舎に避難して助かったお話やその後の階上中での語り部クラブの話など参考になりました。杉の下地区の話もとても参考になりました」
【釜石市鵜住居地区】いのちをつなぐ未来館、旧釜石東中・鵜住居小からの避難経路
・避難した住民160人近くが犠牲になった旧防災センター跡地の「未来館」と慰霊碑視察
・600人の児童生徒が無事に避難した避難経路を当時の2年生の語り部の案内で視察
・語り部と1時間にわたり意見交換
「日頃から防災教育を丁寧に行うことで、非常時に児童生徒が自ら判断して行動に移すことができる。教員は児童生徒に、そういった力を身に付けさせる存在であることに改めて気づかされた」
「釜石東中生が率先避難をした経路を、実際に話を聞きながら辿ってみることで、当時の緊迫した状況や避難者の心境がよく分かった。また、防災センターとの対比にもなり、想定外を作らず最善を尽くして避難したことを実感できた」
「避難経路を歩いて子どもの気持ちを考えながら歩いたことが良かった。また川崎さんのお話より、日頃の訓練がいかに大事かに改めて気づかされた。なぜ防災学習に取り組むのか、目的を持って生徒と一緒に取り組むことが大事だと思った。まずは地域を「知ること」から。そして生徒たちが自主的に取り組むしかけづくりを行わなければと思った」
【南三陸町】旧戸倉小学校・戸倉中学校
・児童90人が高台に避難して無事だった小学校の判断と経路を当時の校長の案内で視察
・1時間にわたり、意見交換
「22.6メートルという大津波の中でも、みんなで協力してたくさんの命を救ったという点。高台の駐車場とさらに高台の神社という数メートルが生死を分けたという話はとても印象に残った」
「戸倉中学校跡に立ってみて、津波は「海が持ち上がること」という意味がよく分かった。この高台まで来れば大丈夫だろうという安心感を感じた後に襲ってきた津波の恐怖にも共感できたと思う。五十鈴神社で過ごした夜の不安感も感じられた。その時、自分ならどうするかということを一番よく考えさせられた」
「避難場所についてたくさんの意見共有がされていた。きちんと自分の意見を伝える教員の存在から、事前の準備や人間関係の大切さを改めて感じました。震災当日の、実際に走って上がって行った判断、津波の恐ろしさ、地域の人々との協力、校長先生の後悔など、具体的に現地でお話を聞くことができたことは、本当に貴重な経験でした」
【石巻市】大川小震災遺構
・児童教員84人が犠牲になった学校跡地を、娘が犠牲になった元中学教師の案内で視察
・1時間半にわたり、意見交換
「犠牲者が多く出てしまった学校という事実しか知らなかったが、実際に佐藤先生の話を聞きながら現地に立つと、グラウンドでずっと待機をしていた子どもたちの恐怖心や「大丈夫」と言うことしかできなかった先生たちの焦り、山に逃げようとしたり声をあげたりしたけど止められてしまった子どもたちや先生たちのやるせなさなど、当時の現場を想像しながら、それぞれの立場の心境について深く考えさせられる場面が多く、胸が締め付けられた」
「未来を拓くためにハモること、熱をもって伝えること、大切な命を守るための、ハッピーエンドを達成させられるマニュアルになっているかなど、大切な視点や考えを与えてくださった」
「遺族として、教師としての両方の立場としての講話を聴くことができ、大川小学校の過去と現在を想像しながら学ぶことができました。子供は頭の先から下まで全部、命に見えるという言葉はとても印象に残りました」
【石巻市】門脇小震災遺構
・津波火災の様子と素早く裏山への避難を果たした学校避難の過程を当時の校長の案内で視察
・1時間にわたって意見交換
「校長として、命を守るために本当にどうしたらいいかずっと考えていたという話を伺い、事前に準備しておくことの大切さを感じました。また、地域とこつながりや、授業を大切にする、学級経営が大切という話はその通りだと思いました。また、実際に自分でも取り組めることだと思います。学校をあげての防災教育をしようと思うと多くの準備が必要ですが、授業であれば今日から取り組めるからです。また、このことを常に心の真ん中において生徒と向き合っていきたいと思います」
「日々の学級経営こそが防災教育に繋がる、ということを聞いて、一担任としてできることがあるんだと背中を押されました。教員間での備えだけでなく、子どもと向き合う毎日の積み重ねを大切にすることで、命を救うことができると思うことができました」
【仙台市内・河北新報社1階ホール】震災時の避難所運営
・石巻西高校の元校長が避難所対応経験を元に避難所運営の要点を講話
「学校の避難所の運営に関わることについて、唯一具体的に聞けた。さまざまな著書についても知ることができた。勤務校も避難所になる可能性が高いため、実践的な講演内容であった」
「より高い視座で、防災教育や行政のあり方を考えられており、大変参考になった」
「全国各地で避難所の運営ワークショップを開催され、その切り口から生徒たちをとても深い学びに導いておられることを知り、感銘を受けた」
【仙台市】荒浜小震災遺構
・地域住民も含めて320人が屋上避難し命を守った学校を当時の校長の案内で視察
「自然災害発生の割合は、在校時の方が圧倒的に起こる確率が低く、授業中ばかりを想定した避難訓練ではダメだと気付かされた」
「避難時の様子、救出するときの話などを聴かせていただいた。現任校も地震•津波発生時に避難所となります。そのこともあって、避難所を運営する学校管理職のお話は貴重であり、とても参考なった」
- 総括ワークショップの様子と事後に寄せられたリポート(一部抜粋・構成)
■中学校教諭
自校の防災への取り組みは命を守ることに本当につながっているのか、自分たちが暮らす地域にはどのような課題があるのか。自分や大切な人の命が失われることのないように、災害を自分事として捉える勇気をいただいた。
災害を正面から見つめ直すのはとても覚悟のいることだ。しかし、教員としての使命を全うするためには避けて通ってはいけない道であると気づかされた。互いの命と尊厳を守り合える社会を作るため、本研修で学んだ全ての教訓を、情熱をもって語り継いでいくことを決意した。輝く一つ一つの命を守り、心の底から大切にできる人間でありたい。
■小学校教諭
4日間の順路にとても意味があったことを、最終日に気づきました。最初の2日間、変わり果てた姿に言葉を失い「もう無理なんじゃないか」と弱気になっていました。ですが、3日目に2人の語り部の方からお話を聞いた後、自分にできることに気づくことができました。最初の2日間、相部屋だったことも有難かったです。初対面の人と相部屋に不安がありましたが、あの2日間たくさんの方が亡くなられた震災遺構をたくさん見た後に1人部屋で過ごしていたら、押しつぶされてしまっていたと思います。また夕食等で沢山の先生方が役職等をあまり気にせず、気さくに話してくださったことで、一人では消化しきれない思いを整理することができました。
そして、武田先生が車内でお話してくださったことの中に沢山の発見がありました。「なぜ、生き延びようとするの、なぜ避難訓練をするの」。この問いは、来年度以降の避難訓練でクラスの子どもたちに問いかけ続けていこうと思います。災害に巻き込まれて死ぬことは、人間としての最後の尊厳が守られないことになるという視点を持っていなかったので、驚きでした。そして武田先生からの最後の問いであった「防災教育を何と言い換える?」の中で防災教育も平和教育も「命を守る」ということが共通しているよねと言っていただき、「防災と平和教育をしたいと思っていた自分は、命を守る教育がしたかったんだ」と気づくことができました。長時間にわたり、揺れる社内の中で、沢山のことを教えていただきありがとうございました。
■小学校教諭
この研修を受けてみて教員ではない妻にも受けてほしいと思いました。原爆と同じで日本人は全員知る必要があると思いました。教員以外にも裾野を広げてほしい。
■中学校教頭
視察を通じて、「防災を学ぶこと」は単なる知識の習得ではなく、自分の生き方そのものにつながると強く感じました。震災の教訓を次の世代に伝えることは、防災教育の枠を超え、「生きる力」を育むことにもつながります。教師として 、子どもたちに「命を守る力」だけでなく、生きることの意味や人とのつながりの大切さを伝えていかなければならないと、改めて決意しました。また、日本全国から集まった多くの仲間と出会いました。防災に対する熱意を持った彼らと学び合い、意見を交わす中で、自分自身の考えも深まりました。今後もこのつながりを大切にし、情報を共有しながら、防災教育をより良いものへと「バージョンアップ」していきたいと思います。
この研修は、私の価値観や生き方そのものにも 大きな影響を与えました。「防災への熱意と本気」を決して薄れさせることなく、常に学び続け、より良い防災教育を追求していく覚悟です。
■特別支援学校教諭
ネットに載っていることや報道されたことだけではなく実際に現地を訪れ、当時の発生状況や避難の仕方、被害の大きさ等たくさんのことを見聞きし、想像しながら五感で感じられることができました。研修を通して、たくさんの学びがありましたが、特に「①事前の準備の大切さ②環境づくり③意識することの大切さ④伝えることの大切さ」の4つが大切だと感じました。
被災して亡くなられた方の多くの地域が、海から遠い(海が見えない地域等)となっており、中途半端な距離があることで自分の経験や過去から学んでいる知識だけで大丈夫だと判断してしまう正常性バイアスが働いていたことでたくさんの命が奪われました。防災を自分事としてとらえ、想定外をなくせるように最悪の想定を考えたうえで学校に関わっている人たちで意見を出し合いながら命を守るためのマニュアル作りに取り組みたいです。みんなで作ることで、マニュアルが意識でき、いざというときに個人個人が臨機応変に動くことができ、瞬時に判断できるようになるのではないかと考えました。そのためには、立場等関係なく必要なことを言い合える関係づくりを大切にしていきたいと思います。
また、地域の方や保護者の方との連携を大切にするような行事の開催や関係づくりをしたうえで、学校は命を助けることができる場所として認識し、今回の研修で得たたくさんのことを研修等で共有し、皆で命を大切にしていきたいと思います。このような研修の機会を与えていただけたことに感謝しています。ありがとうございました。
■中学校教諭
私の人生観、教育観が変化そして進化しました。防災教育を別の言い方をすると考えたときに真っ先に思い浮かんだ言葉「生命教育」でした。災害時にいのちを救うことができるのは紛れもない教職員だと感じました。多く子供達をまとめあげ、あらゆることに導くことができるかけがえのない存在が教員であると認識しました。
多くの話を聞く中で、救われたいのちと失ったいのち両方とも紛れもなく、大きな影響を与えていたのが、教員であることがとても響きました。門脇小学校の元校長鈴木さんが、今でも亡くなった児童のことを想うことと、その当時にもっと津波に対する意識が地域の人たちにも伝わっていたら救われたいのちは多かったのではないかと語っていただき、特に、後者の言葉は深く、そして学校が地域を救う大きな担い手であるという熱い使命を持っていることを感じました。そのお話を聞いたことで、自分のここまでの取り組みや周りの人たちとの関わり方を改める機会を得ました。
「歴史を知り、未来を拓いていく」ことを今回の研修で自分が今いるところで伝えていくべきことであるという強い使命を感じています。早速、全校生徒そして、教職員向けの研修プレゼンを作っています。伝承を伝承していくことが未来を築いていく小さな一歩となり、大きな大切なものを守ることになると思いました。貴重な研修ありがとうございました。
■中学校教諭
研修を通して、これまでの防災教育に対する価値観が大きく変化しました。私の中で大きく変化したことは、日常の指導と学校の仕組みの重要性です。普段の学級での指導、授業での教科指導、そして学校における教育計画に至るまでの全てが防災教育につながっていくという視点をこの研修で学びました。この視点で、これまでの自身の教師としてのあり方を振り返ると、職責に対する意識が甘かったのではないかと考えました。安心して学校生活を送るための基盤となる学級指導はこれまで効果的だっただろうか、生徒がいきいきと対話できる授業を行えていただろうか、実施してきた避難訓練は形骸化してなかっただろうか等、とても多くの反省をしました。
今までの避難訓練や教育計画等が生徒を守るための役割を果たしていたかを含めて、改めて振り返っていかなければならない。緊急時は想定外のことが多くありますが、それらを乗り越えるためには基盤となる学校の立場が大切だと感じました。特に避難訓練や防災計画が生徒の命を守るためによりよいものになっているか、次年度に向けてより詳細に見直していきたいです。
(了)



















