「みんなで作る防災教育」配信にあたって

令和3年3月11日、東日本大震災発生から10年目になります。また、令和元年台風19号の被害発生から1年半が過ぎました。宮城教育大学 防災教育研修機構では、この10年間に実施した被災地防災研修会で、お話を伺った現地の方や語り部の方々の映像や訪れた被災地の現在の映像を機構のホームページに公開します。映像は、先生方自身の研修や防災教育に活用していただき、できれば映像を活用した際の指導案・計画書等のデータを「みんなで作る防災教育」のホームページに公開していただき、防災教育を行う参考にしていくサイクルを作りたいと思い、本ページを立ち上げました。

被災地防災研修会は、学生を対象として震災直後からボランティア活動とともに機構の中心企画として実施してきました。学生の反応から、この研修会は、学生だけでなく、現職教職員にこそ必要な研修ではないかと考え、平成29年に県の防災担当者と南三陸地区の教員に研修会に参加してもらいました。平成30・令和元年度に開催した被災地防災研修会には、北海道・東北・関東・東海・近畿・四国地区の教職員の方々に参加いただきました。研修会に参加した学生と先生の感想を紹介します。

ニュース、新聞、授業などで今まであらゆるところで、震災のことや防災教育について学び、自分なりに考えも持っていたつもりだ。しかし、今回の研修でいかにそれが無知であったかを思い知らされた。ここに来ることなく教員になっていたらと思うと本当に恐ろしくなった。後からこうすればよかったのだと簡単に言えるが、何が正解なのか、その場で答えを出すのは非常に難しい。教師を目指している私ができることは現場を訪れ、当事者に話を聞き、少しでも判断の過程を学ぶことである。

「自らが現場に立ってみる」、この体験というのは圧倒的で、文章や写真で知っていたつもりになっていたそれ以前の自分が恥ずかしく思うほどです。参加した経験を伝えるにあたっては、写真や資料で伝えますが、現地で見て感じた自分の感覚を体現することは不可能だろうと考えます。「とにかく行って見てほしい。その目で見て体で感じてほしい。」と強く勧めることが一番正当な方法ではないかと感じています。

くしくも二人とも被災地に立つことの大切さを述べています。被災地で現地の方々の話を聞き、防災教育について様々なことを感じながら学んでほしいという思いが伝わってきます。関東圏の海の無い県や内陸の学校の先生にも多く参加していただき、先生方は研修で学んだことを学校で伝えなければと語っていました。教えている子どもたちが将来どこに住むか、災害発生時にどこにいるか分かりません。今回の映像は日本全国の先生方に見ていただき、自分のいのちは自分で守ることのできる子どもたちを育てていただきたいと思います。

今回の映像公開にあたっては、これらの思いを少しでも伝えられるようにまとめてみたつもりですが、伝わらないことの方が多いようにも思います。子どもたちのいのちを守ろうという先生方の取り組みに少しは参考にしていただけるものと考え公開するものです。

映像では、お話してくださる方の被災等について、はじめに簡単に紹介しています。映像を活用する前に、事前にインターネット等で調べることによってより効果的に使えるものと思います。ご不明の点は、当機構まで問い合わせ願います。

先生方に本映像を活用した記録をこのホームページに投稿していただき、皆さんで活用・共有することにより、防災教育の充実を図ることができるものと考えます。

本機構では、新型コロナウィルスへの対応ができしだい、被災地での防災研修会を再開します。10年あるいは1年経った現地の状況から防災教育へのヒントを感じ取ることができるものと思います。そのときを心待ちにしています。
最後になりますが、映像作成に協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます

宮城教育大学 防災教育研修機構

311いのちを守る教育研修機構

特任教授 千田 康典